フランチャイズ制度とのれん分けについて

飲食店を経営していると、「いずれは業績を上げて多店舗展開を」という野望を持っている方もいらっしゃると思います。お店の多店舗化に限って言えば、大きく分けて方法としては２つあります。
１つは「フランチャイズ制度」。もう1つは「のれん分け」という方法です。どちらも長所・短所がありますので、今回はその違いをお伝えしつつ、のれん分けを採用する目的をご説明します。のれん分けという言葉自体からも分かるように、古くは江戸時代から存在しており、元を辿れば長年仕えた奉公人の独立を支援する制度でした。ここでポイントなのは、「長年仕えた」というところです。今で言えば、長年勤めた社員に対して商標の使用を認めた上で独立を支援する仕組みがのれん分けの特徴です。
一方、最近よく聞く「フランチャイズ制度」との違いですが、一番大きな違いは、商標を得るのが「社員」か「第三者」かの違いです。フランチャイズの謳い文句で多いのが「未経験でもオーナーになれます！」というものですが、特にそのお店の社員ではない第三者でもオーナーになれる仕組みです。フランチャイズ本部側から様々なノウハウの提供を受ける代わりに、オーナーは本部に一定のロイヤリティを支払うことが条件となります。のれん分けもフランチャイズも仕組み自体は同じケースが多いですが、もし自社ブランドを世間に広めたいということであれば、フランチャイズ制度の場合注意が必要です。フランチャイズはのれん分けに対して第三者の独立を簡単に促しています。それに加え、ツイッターやフェイスブックのようなSNSが発達したことで、1箇所で起きた不祥事が一気に全国に広まるリスクもあります。特に最近では、アルバイトが悪ふざけをした動画がSNSに拡散したことにより、実際に閉店にまで追い込まれるケースも出てきています。簡単に独立が出来ることで数は増やすことが出来ますが、その分目の届かない範囲が増えてしまうと、結果的にブランドが傷ついてしまうという可能性もあります。それに対してのれん分けでは、フランチャイズに比べて店舗展開のスピードは遅いですが、ブランドをしっかりと守っていくという点では優れている戦略です。ブランドを守るか、それとも多少のリスクがあっても多店舗展開のスピードを取るか、何を目的とするかを判断した上で決めていくのが良いでしょう。